不動産を売却するためには、所有者本人の意思確認が不可欠です。
しかし本人が認知症により正常な判断能力を失うと、売買契約などができなくなってしまいます。
そんなときに活用したい成年後見制度とはどのようなものなのか、注意点とともに確認していきましょう。
親が認知症になったときの不動産売却方法:成年後見制度とは?
成年後見制度とは、本人に代わって法的な契約手続きや財産管理をおこなう成年後見人を、家庭裁判所に選任してもらう制度です。
選任するのは家庭裁判所ですが、申し立ての時点で候補者を提出できます。
通常は子どもなどの近親者や、弁護士を後見人に指定します。
成年後見人ができること
成年後見人は、主に以下の行為ができます。
●本人名義の預貯金の管理
●不動産の管理
●確定申告
●生活保護の申請など
被後見人の財産を守る原則のもと、さまざまな手続きを代行できます。
そのなかには、不動産売却も含まれます。
たとえば認知症になった本人の自宅を売却し、介護施設入所のための資金に充てたいケースなどが考えられるでしょう。
親が認知症になったときの不動産売却方法:成年後見制度の注意点
認知症になった本人に代わり、不動産売却などをおこなえる成年後見制度ですが、いくつかの注意点があります。
無制限に売買取引ができるわけではないため、取引の際は注意してください。
売却には家庭裁判所の許可が必要
実家など本人の居住する家を売却するときは、家庭裁判所の許可が必要です。
家庭裁判所に対して、居住用不動産処分許可の申し立てをおこなってください。
そこでなぜ不動産売却が必要なのか、そして代金は何のために使用するのかを判断した上で許可がおります。
なお居住用ではない不動産(別荘など)の場合は、裁判所の許可は不要です。
ただし本人の財産を守る原則はあるため、売却理由や売買価格には注意してください。
後見人になると辞退が難しい
後見人を選ぶときの注意点として、一度選ばれると裁判所の許可がなければ辞められません。
たとえば不動産売却のため成年後見人となり、取引終了後にやめようと思っていても、正当な理由がない限り辞退は認められないでしょう。
基本的には被後見人が亡くなるまで支援しなければならないため、家族から後見人を選出するときは十分に注意してください。